恋から逃げるのには理由(わけ)があって
スーパーに入ると、私は必要なものを淡々とかごに入れた。
牛乳、卵、冷凍うどん、洗剤、詰め替え用のシャンプー。
最後に、安売りのプリンをひとつ。

「プリン」

「見ないでください」

「好きだったよね」

「全国民の半分はプリンが好きです」

「向日葵は、カラメルが苦いほうが好き」

手が止まった。

それは、子どものころからの私の好みだ。
だから、一度目の人生でも、太陽はいつも少し苦いカラメルのプリンを買ってきてくれた。「今日も生き延びられたから、ご褒美」と笑いながら。

「……味覚は変わります」

「そっか。じゃあ、今の好きな味を覚える」
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