恋から逃げるのには理由(わけ)があって
「だ、大丈夫です」

声が裏返った。
全然大丈夫ではない。
足より心が捻挫している。

「怪我は?」

「してません」

「足首、痛くない?」

「痛くないです。痛いのはプライドです」

「それは手当てできないな」

「しないでください。触診も禁止です」

太陽は少し笑った。
でも、その目はまだ心配そうだった。

「ごめん。咄嗟に触れた」

「……転びそうだったので、今のは不可抗力です」

「うん」

「不可抗力ですから」

「わかった」

何を必死に確認しているのだ、私は。
彼の腕の中にいた数秒を、事故として処理したいのだ。主に心の。
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