恋から逃げるのには理由(わけ)があって
「……こういうの、慣れてますね」

「何が?」

「女性に上着をかけるやつ」

「向日葵にしかしてない」

「さらっと重いことを言わないでください」

「寒そうだったから」

本当にそれだけ、という顔だった。

私はジャケットの端をつまんだ。
返すべきだ。
返したほうがいい。
でも、風は冷たいし、布はあたたかいし、私の意思は薄手のコートより頼りない。

「看病、ありがとう」

太陽が川のほうを見ながら言った。

「おかげで助かった」

「人道支援です」

「うん。人道支援でも、嬉しかった」

「前向きに受け取らないでください」

「受け取るよ。ちゃんと」

彼は紙カップを持ったまま、少しだけ笑った。
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