恋から逃げるのには理由(わけ)があって

第11話 向日葵の1回目の人生①(プロポーズ)

一度目の人生のその夜も、チャイムは鳴った。

一人暮らしの部屋で、私は片手にコンビニの割り箸、もう片方の手に半額シールつきの冷やし中華を持っていた。

冷蔵庫には飲みかけの麦茶。
ローテーブルには畳みかけの洗濯物。
テレビでは、音量を小さくしたバラエティ番組が、知らない芸人さんの笑い声を撒き散らしている。

平凡。

あまりにも平凡。

世界的俳優とか、運命の再会とか、人生をひっくり返すプロポーズとか、そういう派手な単語とは無縁の夜だった。

ピンポーン。

チャイムが、もう一度鳴る。

「……こんな時間に?」

宅配だろうか。
いや、何も頼んでいない。

私は冷やし中華をローテーブルに置き、割り箸を握ったまま玄関へ向かった。

チェーンをかけたまま、ドアを少しだけ開ける。

そして、呼吸が止まった。

隙間の向こうに、王子様がいた。
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