姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
王妃も柔らかな笑みを浮かべながら続けた。

「リシェルは気立ての良い娘です。きっと殿下のお気に召すかと」

その言葉に、わずかに視線を伏せる。

――気に入る、だなんて。

そんなふうに言われることに、どこか居心地の悪さを感じてしまう。

「……そうですね」

ルシアンは、淡々と答えた。

それ以上の言葉は、何もない。

その一言で、すべてが分かった気がした。

――この方は、私に興味などないのだ。

当然だ。これは、政略のための結婚。

彼にとって私は、ただの“条件”に過ぎない。

きっと、彼もまた仕方なく受け入れているのだろう。

それでも。もう決めたのだ。

逃げることはできない。ならば、せめて――

私はこの方の妻として、恥じないように振る舞おう。

どれだけ想われなくてもいい。
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