姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
愛されることなど、最初から期待してはいけない。

それなのにどうしてこんなにも、胸が痛むのだろう。

鏡の中の自分が、少しだけ寂しそうに見えた。

私はそっと視線を逸らす。

――本当に、形式だけの夫婦。

そう自分に言い聞かせるように、静かに息を吐いた。

結婚式は、一か月後に執り行われた。

王城はかつてないほど華やかに飾られ、戦の影を忘れさせるほどの祝福の空気に包まれていた。

けれど、その中心にいる私の胸は、静かに重く沈んでいる。

「……美しいです、リシェル様」

背後で、アンの声が震えていた。

鏡越しに見ると、彼女は涙ぐんでいる。

「本当に……とてもお綺麗です」

「……ありがとう、アン」

自然と、柔らかな声がこぼれた。

幼い頃からずっと、私のそばにいてくれた人。
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