姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
妾の娘として肩身の狭い思いをしていた私に、変わらず優しく接してくれた。

その存在に、どれだけ救われてきたか分からない。

「今まで、本当にありがとう」

そう言うと、アンは首を横に振った。

「そんな……これからも、お仕えさせてください」

その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

けれど――もう、ここは私の居場所ではなくなる。

私は静かに立ち上がった。

白いウェディングドレスが、床をなめるように広がる。

美しい、と言われる装い。

けれどそれは、あくまで“形式のための花嫁”としての姿だった。

大聖堂の扉が開かれる。

一歩、また一歩と進むたびに、現実が近づいてくる。

その先に立っているのは――ルシアン殿下。

初めて会った時と同じ、冷ややかな美しさを纏っている。

私はその前に立った。視線が交わる。
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