姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
胸が、強く鳴る。

どうしてだろう。

こんな状況なのに――それでも、目を奪われてしまう。

「リシェル・アルノーを妻とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」

神官の声が響く。ほんの一瞬の間のあと、

「誓います」

ルシアン殿下は、迷いなく答えた。

あまりにもあっさりと。その言葉が、胸に刺さる。

――嘘ばかり。そう思ってしまう自分がいる。

愛など、ないはずなのに。

「ルシアン・ヴァルディアを夫とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」

今度は、私の番だった。

私はゆっくりと顔を上げる。

ルシアン殿下が、静かに私を見下ろしていた。

その瞳に、感情はない。

ただ、義務としてここに立っているだけの人の目。

それでも私は、思わず小さく問いかけていた。

「……誓っても、構いませんか」
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