姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
「関係ないわ。私は絶対に行かない」

――やっぱり。胸の奥が、少しだけ苦しくなる。

姉はいつだって、自分の望まないことはしない人だ。

「もし向こうで殺されたらどうするの?私は、そんな場所に行くくらいなら……ここで死んだ方がましよ」

その言葉に、思わず体が強張った。

そんなことまで言うなんて。

父は言葉を失ったように黙り込む。

そして、王妃の声が続いた。

「陛下……やはりこの話はおやめください」

静かだけれど、はっきりと姉を庇う声。

「エレノアは大切な娘です。危険な場所へ嫁がせるなど、あってはなりません」

私は、そっと視線を落とした。

――大切な娘。その言葉が、胸に刺さる。

もちろん、分かっている。

姉は正妻の娘で、私はただの妾の子。

比べるまでもない存在だ。
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