姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
――ひとりだ。

そう思った瞬間、胸の奥に静かな寂しさが広がった。

「……寂しいか」

ふいに、低い声が耳元で響く。

驚いて振り返ると、ルシアン殿下がすぐそばに立っていた。

先ほどまで人に囲まれていたはずなのに、いつの間にかこちらへ来ていたらしい。

「い、いいえ……」

反射的に、そう答える。

それ以外の言葉が見つからなかった。

本当は寂しい。

けれど、それを口にして何になるのか分からない。

ルシアン殿下は、私の顔を静かに見下ろす。

「敵国に嫁ぐなど……君も苦労があるだろう」

その言葉に、わずかに胸が揺れた。

――気遣ってくれているのだろうか。

けれど次に続いた言葉は、やはり冷静だった。

「だが、安心しろ」

淡々とした声音。

「君の命は保証する」

一瞬、意味を理解できなかった。
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