姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
披露宴が終わり、ざわめきが少しずつ遠のいていく頃だった。

「――失礼いたします」

静かな声とともに、一人の女性が姿を現した。

思わず目を奪われる。

長い髪に、しなやかな体つき。

その佇まいには、どこか大人びた色気が漂っていた。

「セレナ・ブルーノと申します」

優雅に一礼するその仕草は、洗練されている。

「長年、皇太子殿下のお傍に仕えております」

その言葉を聞いた瞬間、胸がわずかにざわついた。

――この人が。アンから聞いた、あの存在。

「……これから、よろしくお願いいたします。皇太子妃殿下」

柔らかく微笑む。

けれどその指先は、ほんのわずかに震えていた。

そのことに気づいてしまった自分に、胸が締めつけられる。

「殿下は……あなた様に、何でもお話しになると聞いております」
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