姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
言葉を選ぶように、彼女は続けた。

「どうか、これからも……殿下のお傍にいて差し上げてくださいませ」

その声音には、どこか祈るような響きがあった。

私は何も言えなかった。

ただ、静かに頷くことしかできない。

――この人は、彼の特別な存在なのだ。

そう理解した瞬間、胸の奥がひりついた。

その後、私はルシアン殿下と二人きりになった。

「……先ほどの方は」

自然と、口をついて出る。

「セレナのことか」

「はい……どうして、あの方は妃になれないのですか」

少しの沈黙。やがて、彼は淡々と答えた。

「家柄だ」

短い言葉。

「男爵家の出だ。どれだけ側にいても、それだけでは足りない」

その現実が、静かに突きつけられる。

「どんなに……愛されていても、ですか」

思わず問い返していた。
< 23 / 60 >

この作品をシェア

pagetop