姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
促されるように、同じソファーへ腰を下ろした。

距離は近いのに、どこか遠い。

それでも――

今夜だけは、この人は私の“夫”なのだと思うと、不思議な気持ちになる。

「疲れただろう。先に寝ていいぞ」

「いいえ……」

気づけば、言葉がこぼれていた。

「殿下と、一緒に起きています」

ルシアン殿下は、わずかに眉を動かす。

「……好きにしろ」

それ以上は何も言わなかった。

静かな時間が流れる。

言葉は続かない。

けれど、不思議と居心地の悪さはなかった。

ただ、安心するにはまだ遠くて――

気がつけば、瞼が重くなっていた。

抗えないまま、意識がゆっくりと沈んでいく。

その時、ふわりと体が持ち上がった。

「……っ」

驚く間もなく、視界が揺れる。

ルシアン殿下が、私を抱き上げていた。
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