姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
何も言わず、そのままベッドへと運ばれる。

そっと下ろされる感触。

優しい手つきだった。

「……囚われた皇女か」

低く、独り言のような声が落ちる。

半分夢の中で、その言葉だけが耳に残る。

「可哀想に……政治の駒か」

遠くで聞こえるような声音。

その響きは、どこか冷たく――

けれど、ほんのわずかに。

優しさのようなものが混じっている気がした。

私はそのまま、意識を手放していく。

初めて過ごす夜は、思っていたよりも静かで。

そして――どこか、少しだけあたたかかった。

朝、ゆっくりと意識が浮かび上がった。

見慣れない天井。柔らかな寝具の感触。

そして――すぐ隣から、静かな寝息が聞こえてくる。

驚いて顔を向けると、そこにはルシアン殿下が眠っていた。

穏やかな寝顔だった。
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