姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました

第2章 片想いの日々

夜が訪れる。

昼間のざわめきが嘘のように静まり返り、城の中は深い静寂に包まれていた。

私は一人、寝室の中央に立っていた。

あまりにも広い空間。

あまりにも大きなベッド。

そのすべてが、どこか現実離れして見える。

――今夜は、来てくれるだろうか。

そんな淡い期待が、胸の奥に浮かんでは消える。

昨日の朝。

同じベッドで目覚めたあの時間が、ほんの少しだけ心に残っていた。

ほんの少しだけ、距離が近づいた気がして。

ほんの少しだけ――期待してしまった。

けれどどれだけ待っても、扉は開かない。

静寂だけが、時間とともに深くなっていく。

「……殿下は」

耐えきれず、小さく口を開いた。

背後に控えていたアンが、静かに答える。

「本日は……別室にてお休みとのことです」
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