姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
別室。その言葉の意味を、私はもう知っている。

「……そう、ですか」

それ以上、何も言えなかった。

――今日も、あの人のもとへ。

胸の奥が、じわりと痛む。

分かっていたはずなのに。

最初から、そういう関係だと。

私はただの政略の妻で、彼にはすでに心を許す相手がいるのだと。

それでも。

ほんの少しだけ、違うかもしれないと期待してしまった自分がいる。

ゆっくりとベッドへ近づく。

白く整えられた寝具。

一人で眠るには、あまりにも広すぎた。

そっと腰を下ろすと、シーツが静かに沈む。

その感触が、妙に空虚に思えた。

「……こんなにも、大きなベッドで」

思わず、小さく呟く。

「一人で眠ることになるなんて……思ってもいませんでした」

声は、静かに消えていく。
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