姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
ここは、私の部屋でありながら――どこか別の場所のようだった。

灯りを落とす。

暗闇の中、天井を見上げる。

眠ろうとしても、すぐには眠れない。

静かすぎて、余計に考えてしまう。

――どうして、あの人なのだろう。

どうして、あの人のことばかり考えてしまうのだろう。

答えは分かっている。

それでも、認めたくない気持ちがどこかにある。

ぎゅっと、シーツを握りしめる。

この広いベッドの上で、私はただ一人――

静かに、夜をやり過ごすしかなかった。

そして、翌日の夜だった。

眠れずに、そっと寝室を抜け出した。

静まり返った廊下。

足音を立てないように歩きながら、私は小さく息をつく。

ただ少し、水を飲みに行くだけ。それだけのつもりだった。

けれど――その途中で、足が止まった。

見覚えのある後ろ姿。
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