姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
玉座には父王。

その隣には王妃、そして姉――エレノアが立っている。

視線が一斉に、私に向けられた。

「リシェル」

父の声は、どこか疲れていた。

「お前に、話がある」

私は静かに膝をつき、頭を垂れる。

「……はい、陛下」

少しの沈黙のあと、父はゆっくりと言葉を続けた。

「敵国は、和睦の条件として皇女との婚姻を望んでいる」

やはり、その話だった。

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。

「だが、エレノアはこの縁談を拒んでいる」

ちらりと視線を上げると、姉はそっぽを向いたまま、私を見ようともしなかった。

「この国に、皇女は二人しかいない」

父の言葉が、静かに落ちてくる。

「……つまり」

喉がひどく渇く。

「お前しかいないのだ、リシェル」

その一言で、すべてが決まった気がした。

やはり、そうなのだ。
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