姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
午後のパーティーでも、それは変わらなかった。

人々は笑顔を向けてくる。

礼も尽くしてくれる。

けれど、その笑顔はどこか薄く、距離がある。

「お美しいですね、皇太子妃殿下」

そう言いながらも、その視線は私ではなく、後ろにいる誰かを探している。

「……ありがとうございます」

笑顔を返しながら、私はその意味を理解していた。

本来、ここにいるべきだったのは――エレノア。

その影が、常に私の背後にある。

ルシアン殿下の隣に立つ。

それだけで、周囲の視線がわずかに変わる。

けれどそれも、私自身に向けられているわけではない。

“皇太子の隣にいる人物”として、見られているだけ。

その証拠に。

殿下が席を外した途端、空気がわずかに変わる。

先ほどまで話しかけてきた人々も、自然と距離を取る。
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