姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
「皇太子妃は大変だろう」

「はい……でも、何とかやっています」

そう言うと、ほんの一瞬の沈黙。

そのあとで。

「……いつも感心している」

その言葉が、静かに届いた。

――え?

思わず、足が止まりそうになる。

私はゆっくりと顔を上げた。

ルシアン殿下が、こちらを見ている。

感情は薄いまま。

けれど、その言葉は確かに私へ向けられていた。

「……私を、ですか?」

思わず、問い返してしまう。

「この国の歴史も勉強していると聞いた」

淡々とした口調。

「はい……まだ至らないことばかりですが」

「無理はするな」

短い言葉。それだけなのに。

胸の奥が、じんわりと温かくなる。

――見ていてくれた。私のことを、少しでも。

そう思った瞬間、息が詰まりそうになる。
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