姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
「こんな……こんな想い、抱くんじゃなかった……」

声が震える。言葉が途切れる。

胸の奥に溜まっていたものが、一気に溢れ出していく。

――あの人の隣にいたかった。

ほんの少しでも、あの人に見てほしかった。

たったそれだけの願いだったのに。

それすら、叶うことはない。

ベッドへとよろめくように倒れ込む。

広すぎる寝具が、今はただ冷たく感じられた。

「どうして……あの人なの……」

問いかけても、答えはない。

分かっている。

私ではない理由なんて、いくらでもある。

身分も、時間も、積み重ねてきたものも――

すべてが違う。

それでも。それでも――

「……嫌いに、なれたらいいのに……」

かすれた声で、そう呟く。

嫌いになれれば、こんなに苦しくない。

見ても、何も感じなくなればいい。
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