姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
「……リシェル様」

背後から、やわらかな声がかかる。

振り返ると、アンがどこか楽しそうに微笑んでいた。

「まるで、恋をしていらっしゃるようです」

その一言に、胸がどきりと跳ねる。

「……分かってしまうのね」

苦笑しながらそう言うと、アンは小さく頷いた。

「はい。とても分かりやすいです」

恥ずかしさと、どこか諦めにも似た気持ちが胸に広がる。

「……お相手は、ルシアン殿下ですよね」

確認するまでもない、といった口調。

私は少しだけ視線を落とした。

「ええ……そうね」

否定することは、もうできなかった。

アンはくすりと笑う。

「いいではありませんか。ご夫婦なのですから」

その言葉に、思わず顔を上げる。

「……こんなにも、夫を好きな妻って……いるのかしら」

自嘲するように呟くと、アンは真っ直ぐに答えた。
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