姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
ならば、ここで拒むことはできない。

「……承知いたしました」

自分でも驚くほど、静かな声が出た。

その瞬間、大広間の空気がわずかに変わる。

姉は何も言わない。

ただ、私から視線を外したままだった。

私は再び頭を垂れる。

これが、自分の運命なのだと――受け入れるように。

「……お待ちください」

静まり返った大広間に、凛とした声が響いた。

顔を上げると、そこに立っていたのは兄――皇太子セドリックだった。

「本当に、リシェルが嫁がねばならないのですか?」

その言葉に、胸が強く打たれる。

兄は真っ直ぐに父王を見据えていた。

「拒否することも可能なはずです。敵国とて、すぐに戦を再開できる状況ではないでしょう」

静かだが、はっきりとした反論。

思わず息を呑む。
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