姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
――兄は、私を守ろうとしてくれている。

血の繋がりはあっても、私は妾の娘。

本来なら、ここまで気にかけてもらえる立場ではない。

それでもセドリック兄様は、幼い頃からずっと――

まるで本当の妹のように、私を大切にしてくれた。

転んだときは手を差し伸べてくれて、誰かに陰口を言われれば、さりげなく庇ってくれた。

その優しさに、何度も救われてきた。

だからこそ。

今、この場で自分のために声を上げてくれていることが――嬉しくて、苦しかった。

「セドリック」

父王の低い声が、場の空気を引き締める。

「この国に、もはや戦を続ける力は残っておらぬ」

その一言で、すべてが現実に引き戻される。

「兵は疲弊し、民も限界だ。ここで和睦を逃せば、国は持たぬ」

兄は言葉を失ったように黙り込んだ。
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