姉の身代わりに敵国に嫁いだら皇太子に溺愛されました
視線が、一斉にこちらへ向く。

はっとして、少しだけ身を引く。

けれど。ただ一人だけ――

ルシアン殿下だけが、動かなかった。

そのまま、真っ直ぐにこちらを見ている。

視線が、重なる。

一瞬のことなのに、時間が止まったように感じる。

何かを言われたわけでもない。

何かが変わったわけでもない。

それでもその距離の遠さが、はっきりと分かってしまう。

手を伸ばしても届かない場所に、あの人はいる。

「……やっぱり、切ないですね」

小さく、呟く。

好きになってしまった。

もう、戻れない。

それでも――視線を逸らすことは、できなかった。

私はただ、その姿を見つめながら。

静かに、自分の気持ちを受け入れていた。
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