遼くんは泣き顔がお好き。
「遼くんも、ありがとね
毎日話し相手になってくれて」
「…うん、どーいたしまして」
あたしの言葉を聞くと、遼くんは珍しく照れたように笑った。
その顔を見た瞬間、なぜだか喉の奥がきゅうっと締め付けられた。
”れいちゃん”
耳元で甘く呟かれた言葉がまた脳内によみがえる。
帰り道で遼くんに後ろから抱きしめられたあの日から、
あたしの中で何かが変わってしまった。
笑いかけられると苦しくなるし、
名前を呼ばれると勝手に顔に血が昇る。
むしろ何故今まで普通の態度で居られたのか分からない。
これはあれだ、
ベタベタされすぎておかしくなっちゃったんだ。
そうだ、そうに違いない。
自己完結して前を歩く江波さんたちに駆け寄ろうとした瞬間、不意に手首を掴まれて左の方へ引き寄せられた。
「…っ、な、何?」
「もうちょっとだけ、横歩いてよ。」
「や、でもみんな行っちゃうからー…」
「………なんかれいちゃん最近変じゃね?」
じとっとした目があたしを追いかけて来て、思わずのけ反ってしまう。
「何?別に普通だけど?
ほらほら、みんな先行っちゃうから!!早く行こ!」
しまった、早口で喋りすぎた。
これじゃ自分から”動揺してます”って言ってるようなもんだ。
納得いかない顔で首を傾げる遼くんからさりげなく距離を取りつつ江波さんたちの元へと走った。