有罪愛
 現在、二〇二三年。

「……なに、これ……」

 十九歳の瀧沢春佳(たきざわはるか)は、同居している兄のパソコンを見て目を見開き顔色を失っていた。

 春佳は父を自死で喪って以降、彼女を虐待し、ネグレクトする母親と一緒にしてはいられないと、二十六歳の兄、冬夜(とうや)の家に引き取られた。

 すでに自立してエンジニアとしてバリバリ稼いでいる彼は、そこそこいいマンションに住んで悠々自適な一人暮らしをしていた。

 そこにお邪魔するのは申し訳ないが、冬夜がどうしてもというので、同居させてもらう事になったのだ。

 春佳は美形で何をやらせても完璧な冬夜に、憧れを抱きつつもコンプレックスを抱いていた。

 兄が実家を出て行ったのは八年前で、当時十一歳の春佳は冬夜が何を考えて一人暮らしをしたのか分かっていなかった。

 大好きな兄がいなくなって悲しいものの、子供の春佳にはなすすべもない。

 そのまま家族三人で暮らし、春佳が大学生二年生になった夏、父の庸一(よういち)は投身自殺をしてしまった。

 瀧沢家は父の死に翻弄され、春佳はこうして兄の家で過ごす事になっている。

 しかし兄と暮らすようになってから様々な出来事が起こり、春佳はどうしても兄のパソコンを調べなければならず、ロックを解除した。

 Dドライブの奥には、冬夜の日記や『春佳』と名前をつけられたフォルダもあった。

 恐る恐る『春佳』フォルダを開いてみたら、身に覚えのない自分の盗撮写真がズラリとあったのだ。

 ゾワッと鳥肌を立たせた春佳は、信じられない思いでモニターに映っている〝自分〟を見る。

「いけない」と思うのに、マウスをクリックする手が止まらない。

「……どうして……」

 震える吐息をつきながら呟いた春佳は、こうなった経緯を思い出していた。




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