結婚したら義母3人と夫の愛人2人が屋敷に住んでいました(全員まとめて追い出します)【短編】
「う、う、嘘でしょ……」

 ディアナ・クシュタル伯爵令嬢とアルベルト・ヨルク伯爵の結婚式が終わって、王都にあるヨルク伯爵家の屋敷に到着した途端、彼女は絶望に打ちひしがれていた。
 そこには、

「テレーゼよ」

「ドロテアよ」

「ラヘールよ」

 三人の義母と、

「ローゼでぇ〜っす」

「シャルロッテですわ」

 二人の夫の愛人が住んでいたのである。

「…………」

 突然5人もの同居人を紹介されて、ディアナは頭が真っ白になった。

 婚前に聞いていた話では、夫の父である前ヨルク伯爵は引退。今は領地で奥方たちとのんびりと暮らしているとのことだった。
 ましてや、夫の愛人の話など、少しも出ていなかったのだ。

「おっ……」

 しばらくのあいだ口をパクパクさせていたディアナだったが、やっとの思いで声を発した。

お義母様(おかあさま)がたは、領地へお引越しされたのでは……?」

 ひとまず、疑問点を尋ねてみる。

「あぁ、直前で中止したのよ。あんな田舎、ごめんだわ」と、第一夫人のテレーゼが答える。

「そうよ。ギュンターには王都のアカデミーじゃなくちゃ」と、第二夫人のドロテア。ちなみにギュンターとは彼女の息子で、ヨルク家次男である。

「だって領地はブティックもカフェもないんでしょう〜? つまんなーい!」と、ひときわ若い第三夫人のラヘール。

「そ、そうですか……。あはは……」

 ディアナはもう、笑うしかなかった。

 貴族には一夫多妻が許可されており、前伯爵も第三夫人まで娶っていることは聞き及んでいた。
 多少は不安はあったものの、領地で暮らしているので特に影響はないだろうと思っていた。

 しかし実際に三人の義母がずらりと目の前に並んでいると、なかなかの迫力である。

 そして、夫の愛人。これは完全に初耳だ。
 家門間の微妙な力関係はあっても、知っていたら絶対に拒否していた。

「アルベルト様ぁ〜。もう行きましょう〜?」

 愛人のローゼがアルベルトの腕を掴んでくねくねと身体を揺らす。ぱっちりお目々にピンクブロンドの可憐な美少女だ。

「この方が奥様? 地味な方ですこと」

 愛人のシャルロッテがディアナを品定めするように眺めながら、くすくすと意地悪そうに笑う。派手な赤髪のダイナマイトボディーなセクシー美女だ。

 二人ともタイプは異なるが、胸のボリュームが素晴らしいという点だけは共通していた。

 ちなみにディアナは、茶色いくせ毛に茶色い瞳。
 中肉中背で胸板も薄く、愛人二人に比べると特徴のない容姿だった。ザ・平凡といったところである。

 アルベルトは二人の愛人の腰を抱いて、

「ディアナ。部屋は侍女長に案内されるといい。それから家令に、正妻としての仕事の説明も受けるように」

「ええっと……。旦那様は?」

「私はやるべきことがあるのでな」

(それって、愛人たちと昼間から仲良くすることですかぁ〜!?)

 ディアナはいろいろ突っ込みたい気持ちを抑えて、ひとまず彼に従った。
 彼女は今日ここに来たばかりの新参者だ。現当主の正妻ではあるが、現実的な立場は一番低い。
 なので、しばらくは屋敷内の状況把握に努めようと思ったのだ。


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