クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「瑞希、お前は綺麗だよ」
 恋人に囁くような甘い表情で言われて心拍数が上昇し、もう食事どころではない。
「な、な、なにをいきなり……」
 戸惑う私の反応を楽しむように隼人さんが笑みを浮かべる。

「……キスしたい」
 熱い声でさらに囁かれて、麻酔にかけられたように動けなくなる。
 パリのマリー橋の下でキスした時のように、隼人さんの顔が近づく。逃げなきゃいけないと思うのに、隼人さんの熱い瞳から目を逸らせない。隼人さんの顔はもう鼻先にあった。

「今、お前、女の顔をしているぞ」
 むにゅっと隼人さんが私の鼻をつまみながら言った。
 一気に緊張が緩み、恥ずかしさが込み上げてくる。

「もうっ、やっぱりからかったのね!」
 勢いよく立ち上がると、よろけて転びそうになった。
「危ない」
 隼人さんが肩を支えてくれる。
「……す、すみません」
 隼人さんとまた視線がぶつかり、反射的に逸らすが、また張り詰めたような空気に包まれ、どうしたらいいかわからない。
「……真っ赤だな」
 隼人さんの大きな手が私の頬を撫でた。
「隼人さんが、変なこと言うからです」
 俯いたまま口にすると、「俺も男だからな」という独り言のような声が返って来た。
「え?」
 顔を上げると、気まずそうな隼人さんの瞳と合う。
「……なんでもない。食べよう」
 隼人さんは私を解放すると、再びダイニングテーブル前に座り、私の作った焼きうどんを食べ始めた。それに倣い私も食べるけど、緊張で味がわからなくなっていた。
< 118 / 143 >

この作品をシェア

pagetop