クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「な、何言っているんですか。キャプテン、酔っ払い過ぎですよ」
「そう言えば南雲、薬学部に通う妹の学費が大変だとかって言ってなかったか? それからお母さんの入院費とか……」
 私がお金に困っている事情を次々と言われ、生きた心地がしない。
「それはもう大丈夫になったって言ったじゃないですか。移行訓練も終わって、フライトでいっぱい稼いでいますから。今岡キャプテンが勧めてくれたおかげで、B737にいた時よりもお給料上がりましたから」
 客席数の多いB787の方がフライト手当がいいと教えてくれたのは今岡キャプテンだった。それでタイミングよく移行訓練の話が持ち上がり、私は志願したのだった。
「そうか、それは良かった。よし、次日本酒行くぞ。南雲も飲め」
 真っ赤な顔をした今岡キャプテンが日本酒を頼んだ。
 私の前にマス入りのグラスに並々と入った日本酒が運ばれてくる。
「よし、乾杯」
 今岡キャプテンの合図で日本酒を口にする。ビールよりもアルコール度数は高いが、日本酒は好きだ。
「南雲さん、お酒強いんですね」
 隣でレモンサワーを飲んでいる水沢さんに言われた。
「まあ、わりと」
「高月キャプテンも強いんですか?」
 隼人さんとお酒を飲んだ経験がないので、水沢さんの質問に目が泳ぐ。
「えーと、どうだったかな」
 下手なことを言えば今岡キャプテンから訂正が入りそうで何も言えない。
「……高月キャプテンとはお酒を飲まないんですか?」
 さらに水沢さんに聞かれて、言葉に詰まる。
 恋人だったらやっぱりお酒はよく一緒に飲むのだろうか? 恋愛経験が少ないからその辺のこともわからない。なんて答えたら正解なんだろう。そう思った時、テーブルの上のスマホがブルブルと震えた。
 表示されたのは隼人さんの名前だった。天の助けとばかりに私はスマホに出た。
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