クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
シャルルドゴール空港に到着したのは現地時間の十九時だった。この時期のパリの日の入りは二十二時頃で、外はまだ昼間の延長のように明るい。
定刻通りの安全運航が出来たことに満足感を得ながら、佐藤キャプテンたちとシップを最後に降り、入国審査を受ける。その後は空港からのクルー専用の送迎バスで三十分移動し、オペラ地区にあるステイ先のホテルに到着した。現地時間で二十時半だった。隼人さんが滞在しているロンドンは十九時半だ。電話して大丈夫だろう。
そんなことを考えながら、ホテルの重厚な回転ドアをくぐった。高い天井、豪華なシャンデリアが視界に入る。パリはいつも同じホテルだったから見慣れた景色だけど、時差や疲れから今夜はシャンデリアの明かりが目に突き刺さる。
思わず立ち止まり、目を閉じて眉間の辺りを指先でほぐしていたら、背後から声をかけられた。
「瑞希、お疲れ様」
聞き覚えのある低めの声に弾かれたように振り向くと、制服ではなく、爽やかな水色のワイシャツ姿の隼人さんが立っていて、目を丸くした。
「……うそ」
「何とかすると言っただろう」
得意げな笑みを浮かべた隼人さんが悔しいほど格好良くて、直視できない。
「……なんで、どうしてここに? ていうか、ロンドンを出ちゃダメですよ」
国際線のロングフライト後は48時間の休息時間を取ることが規則で決まっている。その間に緊急時の呼び出しに備えて滞在都市を離れることは厳禁なはずだ。ロンドンとパリがいくら飛行機で一時間の距離だからって、隼人さんの行動は許されるものじゃない。
「早くロンドンに帰って下さい」
隼人さんの腕を掴んで、無理やり回転ドアの方へと進もうとしたけど、隼人さんはびくともせず、私の焦りを楽しむように目を細めた。
「落ち着け。復路の乗務は交代してもらった。今の俺は完全なオフだ」
頭上から降って来た言葉に、掴んでいた彼の腕を思わず強く握った。
私に会いに来るために休みをとって、ロンドンからパリに来てくれたの? そう理解した瞬間、全身に電流が走ったような強い衝撃を受けた。
「……瑞希?」
胸に手を当て、強い衝撃に戸惑っていると、隼人さんが優しく私を見つめる。目が合った瞬間、心臓がぎゅっと締め付けられ、反射的に視線を逸らした。隼人さんの目が真っすぐ見られない。見たら心臓がどうにかなってしまいそうだ。
「大丈夫か?」
「あの……隼人さんが、いきなり現れるから、驚いて」
つっかえそうになりながら、カラカラになった喉の奥から何とか言葉を発すると、隼人さんが口の端を上げて微笑んだ。そんな隼人さんを見て、また心拍数が爆上がりする。
「サプライズは成功だったな。荷物持つよ」
そう言って隼人さんは私の手からキャリーケースを奪うと、チェックインカウンターに向かって歩き出す。その水色のシャツの後ろ姿に抱き着きたいと思っている自分に驚いた。
「瑞希」
隼人さんが優しい声で呼び、振り返る。また心臓が強く鼓動を打ち、ドクン、ドクンと私の中で大きな音を立てる。もう自分の気持ちを無視できない。私は隼人さんが好きだ。コントロールできないほど深く恋に落ちている。
定刻通りの安全運航が出来たことに満足感を得ながら、佐藤キャプテンたちとシップを最後に降り、入国審査を受ける。その後は空港からのクルー専用の送迎バスで三十分移動し、オペラ地区にあるステイ先のホテルに到着した。現地時間で二十時半だった。隼人さんが滞在しているロンドンは十九時半だ。電話して大丈夫だろう。
そんなことを考えながら、ホテルの重厚な回転ドアをくぐった。高い天井、豪華なシャンデリアが視界に入る。パリはいつも同じホテルだったから見慣れた景色だけど、時差や疲れから今夜はシャンデリアの明かりが目に突き刺さる。
思わず立ち止まり、目を閉じて眉間の辺りを指先でほぐしていたら、背後から声をかけられた。
「瑞希、お疲れ様」
聞き覚えのある低めの声に弾かれたように振り向くと、制服ではなく、爽やかな水色のワイシャツ姿の隼人さんが立っていて、目を丸くした。
「……うそ」
「何とかすると言っただろう」
得意げな笑みを浮かべた隼人さんが悔しいほど格好良くて、直視できない。
「……なんで、どうしてここに? ていうか、ロンドンを出ちゃダメですよ」
国際線のロングフライト後は48時間の休息時間を取ることが規則で決まっている。その間に緊急時の呼び出しに備えて滞在都市を離れることは厳禁なはずだ。ロンドンとパリがいくら飛行機で一時間の距離だからって、隼人さんの行動は許されるものじゃない。
「早くロンドンに帰って下さい」
隼人さんの腕を掴んで、無理やり回転ドアの方へと進もうとしたけど、隼人さんはびくともせず、私の焦りを楽しむように目を細めた。
「落ち着け。復路の乗務は交代してもらった。今の俺は完全なオフだ」
頭上から降って来た言葉に、掴んでいた彼の腕を思わず強く握った。
私に会いに来るために休みをとって、ロンドンからパリに来てくれたの? そう理解した瞬間、全身に電流が走ったような強い衝撃を受けた。
「……瑞希?」
胸に手を当て、強い衝撃に戸惑っていると、隼人さんが優しく私を見つめる。目が合った瞬間、心臓がぎゅっと締め付けられ、反射的に視線を逸らした。隼人さんの目が真っすぐ見られない。見たら心臓がどうにかなってしまいそうだ。
「大丈夫か?」
「あの……隼人さんが、いきなり現れるから、驚いて」
つっかえそうになりながら、カラカラになった喉の奥から何とか言葉を発すると、隼人さんが口の端を上げて微笑んだ。そんな隼人さんを見て、また心拍数が爆上がりする。
「サプライズは成功だったな。荷物持つよ」
そう言って隼人さんは私の手からキャリーケースを奪うと、チェックインカウンターに向かって歩き出す。その水色のシャツの後ろ姿に抱き着きたいと思っている自分に驚いた。
「瑞希」
隼人さんが優しい声で呼び、振り返る。また心臓が強く鼓動を打ち、ドクン、ドクンと私の中で大きな音を立てる。もう自分の気持ちを無視できない。私は隼人さんが好きだ。コントロールできないほど深く恋に落ちている。