クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 マリー橋を抜け、再び初夏の眩しい光が差し込んだ時、名残り惜しむように私たちは離れ、見つめ合う。
 もう橋の下は通り過ぎた後なのに、私を見る隼人さんの瞳は熱が孕んでいる。そして私もそんな目で隼人さんを見つめている。

「……瑞希」
 掠れた声で隼人さんが口にし、私の頬に触れた。
 私はその手に自分の手を重ねて、好きだという想いを籠めて隼人さんと視線を絡ませる。隼人さんの顔がゆっくりと近づく。後、数ミリで唇が重なりそうになったその時――ゴンッと船体に鈍い衝撃が走った。船が桟橋に到着したのだった。
 弾かれたように周囲を見ればみんな立ち上がり始めていた。

「行こう」
 立ち上がった隼人さんが私に手を差し出す。
 いつものクールな表情を浮かべる隼人さんを見て、マリー橋の下でだけ許された恋人の時間は終わったのだと思った。恋心を必死に胸に押し込め、隼人さんの大きな手を取って立ち上がった。だけど、隼人さんの手は熱を帯びて少し震えている気がした。
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