疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン

ドラゴンの治療

<ドラゴンの治療>

しばらくすると、グレーズと呼ばれた老人が、ワゴンにたらいをのせ、その後にリズが白い布を胸に抱えて入ってきた。

素早く袖をまくりあげて、ドラゴンの足元にたらいを置くと、

「足を洗いますから、つけてください」

その口調は、淡々として「拒否権なし」の命令のように聞こえた。

「すぐに洗わないと、ひどくなります」

困惑しているドラゴンを見上げて、追い打ちをかけるように言った。

ドラゴンは顔をしかめて、恐る恐る湯に足をつけた。

薬湯がしみるようで前かがみになり、肩に力が入ったが、しばらくすると脱力して、椅子の背もたれに身を預けた。

リズは慎重に、足を洗い始めた。

「痛みますか?」

軽く指で傷の周囲を押して、確認してみる。

ドラゴンの足先の爪が赤く、巻き爪になりやすい形だから注意は必要だ。

「いや・・大丈夫だ」

ドラゴンはなされるがまま、目をつぶって答えた。

リズはスカートのポケットから、小さな壺を出した。

切り傷や、やけどにきく薬草入りの軟膏が入っている。

「化膿止めの軟膏を塗りますので、足をのせてください」

リズは床に座り、自分のひざに大きな布をのせた。

「お前は・・王女なのに、こんなことをしていいのか?」

ドラゴンは額に手をやって、顔を上にむけたまま小さな声で聞いた。

「修道院では多くの病気やけがの人も来ますから、修道女はすぐに対応をします。

そこでは、身分や立場は関係ありません」

リズは軟膏を塗る手を休めず、答えた。

布を裂いて包帯を手早くつくると、ドラゴンの顔を見上げた。

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