疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン
アンナが背伸びをして、壁にかかっていた灰色の木綿のエプロンを取って、リズに渡した。
「井戸はこっちです」
台所の奥の扉を開けると、土間があり、隅に井戸と大きな水桶があった。
その先は、庭に通じる小道がある。
両脇はこんもりとした茂み、つる草の紫の小花が咲き乱れ、風に揺れるたびに芳香を放っていた。
リズは聞いた。
「ここは魔力のある場所なのですか?」
「ええ、旦那様が森に魔力をかけて、人間が入り込めないように、道を閉じているのです」
レッドドラゴンは、強い魔力を持つと言われる古(いにしえ)の種族。
「あなたたちの生活は、大変ではないのですか?」
そう言って、リズは井戸に水桶を落とした。
ここのご主人様は、ドラゴンはエルフやドワーフを奴隷のように扱う魔物なのか?
アンナは、人懐っこい笑顔を浮かべた。
「旦那様はお優しい方なのです。私たちを守ってくださるから」
「守る・・・とは?」
リズは意外な答えに、水をくみ上げる手を止めた。
「ニンゲンは勝手に木を切って、森を荒らしますしね。一度は、たき火で森が大火事になるところでしたよ」