疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン

傷だらけのドラゴン

<傷だらけのドラゴン>

別館とは長期滞在の客のために建てられた、本館と隣接して建てられた迎賓館である。

普段は使用することがないので、リズとアンナは台所と居間、寝室を急いで掃除をした。

次の日の早朝、リズは寒さで目が覚めた。


いつもと違う大きな部屋だが、窓が北向きなので、秋が深まるこの時期は冷え込む。

リズはベッドから降りると、肩をすくめ、椅子にかけてある灰色の自分の服を見た。

これから寒さが強くなれば、この服だけでは厳しくなる。

取りあえず、何か羽織るものが必要だ。

別館の食堂では、すでにアンナとグレーズが、朝食の準備をしていた。

「あの、ご主人様の分は?」

リズの問いかけに、アンナが口ごもって

「お籠りの時は、一切食事をなさらないのです・・・」

「リズ様、お茶は?」

グレーズが、お茶のカップをテーブルに並べながら聞いた。

「ええ、お願いします。急に寒くなってきているので・・

何かショールか・・マントのようなものが欲しいのですが」

そう言って、リズは考え込むように、額に手を当てた。

やはり、寒さはこたえるし、それにドラゴンの傷も心配だ。

「ご主人様に見つからないように、本館の部屋に取りにいきたいのですが。

どこか入れる場所は、ないですか・」

グレーズはリズから目をそらして、独り言のように言った。

「井戸から台所に行く、扉の脇のはめ板がはずせるが・・・」

リズは何も言わず、うなずいてお茶を飲んだ。

「私は食事がすんだら、お庭を少し歩きます。薬草が見つかるかもしれないので」

アンナもグレーズも、なにくわぬ顔でお茶を一口飲んだ。
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