疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン
リズは一人だけ、この場所に取り残されたことに気がついた。

大きな黒い馬から、長身の男が降りてきて、こちらに向かってゆっくり歩いて来る。

その男・・向かい風が吹くと、フードを払いのけた。

漆黒の髪に、ひときわ目立つ雄鹿のようにカーブをつくる赤い角が2本。

ルビーのように輝く瞳と、鼻筋の通った精悍な顔立ち。

口元が引き締まり、強い意志を感じさせる。

その声は、水面を揺るがすような・・バリトンのよく響く声だった。

「お前が、ナディールの王女なの・・・か?」

リズは木の幹に、倒れないように背をつけ足を踏ん張った。

殺されるかもしれない。

その恐怖より、目の前の赤い角を持つ男から、視線をそらすことができなかった。

美しい曲線を描く赤い角、深紅の瞳・・・この人はレッドドラゴンなのだ。


何かの本で、絶滅した一族とあったのだが。

「そうです・・・・」

リズの消え入るような答え方に、ドラゴンの赤い目が、疑いを持つかのように細められた。

「嘘だろ・・・お前はお付きの修道女?」

リズは、ふっと息を吐いた。

この修道女のような服は、そう見られてもしかたがない。
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