疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン
リズにためらいはなかった。

そう言うと、すぐに走って部屋から出て行った。

自分の部屋に戻ると、血止めに使う薬草と、ピンセットをお盆の上にそろえた。

それから、白いエプロンをつけながら、治療の段取りを頭の中で組み立てていた。

まず、ガラスのような破片を取り除く。

同時に血止めもして、痛み止めも必要だ。

出血と痛みがひどければ、それだけで体力が消耗する。

リズのいた修道院は、併設のホスピスがあり、病気の旅人や怪我をした人が多く訪れた。

修道女たちは、治療の補助や世話をして、医者がいなければ、代わりに医療行為もやった。

ためらえば、手遅れで命が危うくなる事も多い。

リズは寝室に戻ると、暖炉の火を起こし、燭台のろうそくすべてに火を灯した。

「始めます」

ドラゴンは何も言わなかった。

いや、声をだす気力もないようで、断続的に続く痛みと出血で、消耗しているのだろう。

それでも、やっとドラゴンが口を開いた。

「その前に・・・酒をくれ」

リズはうなずくと、サイドテーブルにあるグラスにブランデーを注いだ。

「体を起こせますか」

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