疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン
ドラゴンは満足げに、うなずくと、リズの空になったグラスに、ワインをドボドボと注いだ。

「スープをお持ちしました」

台所の扉が開いて、ワゴンを押しながらアンナが入ってきた。

二人の様子を、偵察にきたのだろう。

ドラゴンは咳払いをして、目の前に出されたスープを見た。

それからアンナの顔を見て、うなずいてから

「お前は、馬に乗る練習をしたほうがいいな。ここではあまり馬車は使わん。

道も狭いし、曲がりくねっているからな。

女や子どもも、皆、馬を乗りこなす」

「エルフたちは、裸馬でも乗りこなしますよ。曲芸でもやりかねないですね」

アンナが笑顔で、話に加わった。

「俺が乗り方を教えよう。小さな馬から始めれば、怖くはないだろう」

その言葉に、リズの眉がへの字に歪んだ。

大きくても小さくても、馬は怖い。

「はい・・わかりました」

リズは渋々返事をした。

これはご主人様の命令なのだから、拒否権はない。

「遠乗りができるようになれば、山のふもとにも行ける。

珍しい薬草も、見つかるかもしれんぞ」

「そうですね」

リズは少し気を取り直して、スープを口に運んだ。


自分の行動範囲が広がるのは良い事だと、前向きに考えよう。

「山はいいぞ。いろいろな景色が楽しめる。季節ごとに花も咲く」

自分で言った<花>というキーワードに、ドラゴンはふと黙り込んで、リズの顔を眺めた。

ろうそくのゆらめく炎で、リズの瞳の色が、紫と青に揺れるように変化するのがわかる。

それは、高貴な百合の花のようで・・・ドラゴンの脳裏に、先ほどのアンナの声が響いた。

静かではあるが、強い意志力と豊富な知識、教養、それに凛としたたたずまいは女王だ。

冬のけぶる霧の中、ひっそりと咲く、孤高の銀灰の薔薇。

目の前の銀灰の薔薇は・・・すでに赤ワインのボトルを空にしていた。
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