疎まれた王女はドラゴンに愛を語らない・魔法の恋の行方・リズとドラゴン
「そうです。エサになる桑の木を増やして、絹糸をつくる虫を育てる事ができれば、

ドワーフの女たちも、現金収入を得ることができます。

エルフの女たちには、その絹糸を草木の染料で染める仕事をしてもらい、布を織ればいいですね。

馬と一緒に、市場で売る事もできますし」

ドラゴンは「なるほど」と言うように、うなずいた。

「女たちが稼ぐようになれば、「鉱山が閉山しても、何とかなる」というわけだな」

リズはうなずき、

「その・・狩りは危険ですから・・・」

ドラゴンは遠くの山並みを見て、独り言のように言った。

「そうだな・・・いつまでも、できることではない」

冬の午後は短く、山の端に陽が陰りつつある。

「桑の木と繭は、アンナに声をかけて、ドワーフの女たちに探させよう。」

ドラゴンは馬の首を軽く叩くと

「さぁ、乗れ。帰ろう」

その声に、リズは渋い顔をした。

「あのぉ・・ゆっくりでお願いします。速いと気を失いそうになるので」

ドラゴンは腹を抱えて、大きな声で笑った。

「バレリアンの大魔術師は、馬が怖いのか?」

「私は、魔術師ではありませんからっ!」

リズは抗議するように、大きな声で答えた。

が、次の瞬間、このまま取り残されたら困ると考えて、苦虫を踏みつぶしたかのように、ドラゴンの顔を見た。

「早く乗れ・・と言っても、一人では無理か」

ドラゴンは手を差し伸べて、リズにあぶみに足をかけさせると

「そうれっ!!」

リズの腕を持って引き上げた。

「よし、行くぞ」

「ぎゃぁっ」

リズの悲鳴があがったが、ドラゴンは気にすることなく、馬を走らせた。

館に着いた時、リズは腰を屈め、涙目で、二度と馬には乗らないと誓っていた。

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