極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「どーして、呼んでくれないんですか……?」

 羽衣子は顔を近づけると、不満そうに昴を見る。

「それは……」

 その言動に昴は少し動揺して言葉に詰まらせる。

「私は……名前で、呼ばれたいんです……」

 羽衣子は拗ねたように唇を尖らせる。

「それに……」
「何ですか?」
「その、話し方もです……」

 言いながら今度は昴の服を軽く掴んだ。

「……敬語、使われるの、嫌……。もっと……普通に話してほしい……」
「普通にしているつもりですけど……」
「違う……」

 羽衣子は首を横に振ると、

「さっきは……もっと、違いました……敬語なんて……使わなかった……」

 悲しげな表情をしながら小さく呟いていく。

「京極さんのほうが……年上なんですから……年下の私なんかに、敬語なんて、使わないで……」

 そして、

「……名前で、呼んで……?」

 その声は甘えるようで、ずっと胸の奥に抱えていた本音のようにも聞こえた。

 酔っているからこそ出てきた言葉なのかもしれないが、嘘ではないのだろう。

 暫く沈黙した後、昴は小さく息を吐き、そして――

「――羽衣子」

 要望通りに名前を呼んだ。

 その瞬間、羽衣子の表情がぱっと明るくなる。

「それです! そういうのが、いい……!」

 満面の笑みでそう言うと、

「――っ!?」

 ぎゅっと羽衣子が勢いよく昴に抱きついた。

 流石の昴もこれは完全に予想外だったらしい。

「お、おい……羽衣子……」

 慌てて名前を呼ぶが、当の本人はどこ吹く風で、満足そうに昴の胸へ自身の身体を預けている。

 酔っているせいか警戒心は完全に消えているのだ。

「羽衣子、一旦離れ――」

 ひとまず離れようと昴が声を掛けると、羽衣子がふと顔を上げ、大きな瞳でじっと昴を見つめ、

「ねぇ……」
「な、何だ?」
「私も……」

 少しだけ首を傾げながら、

「京極さんのこと……名前で呼んで、いいですかぁ?」

 上目遣いでそう尋ねた。
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