極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 心を落ち着かせようと煙草を一本取り出し、ライターで火を点ける。

 先端が赤く灯ると、煙草を咥えて深く吸い込み、ゆっくり煙を吐き出すも、胸のざわつきは一向に収まらない。

 その時、ふと似たような感覚を覚えたことがあったのを昴は思い出す。

 それはショッピングモールで買った物を羽衣子へ渡した時だ。

 その笑顔を見た時も今と同じように胸の奥が妙に熱くなった。

 あの時はそこまで深くは考えなかったけれど今日は違う。

 何故こんな気持ちになるのか、その答えを知るべきだと思ったからだ。

 無意識に煙草を持つ指へ力が入る。

 羽衣子が笑えば嬉しいし、悲しそうな顔をしていれば放っておけない。

 自分へ向けられる無邪気な笑顔を、誰にも見せたくないと思うことさえある。

 ここまで分かっているなら、本当は答えなどとっくに出ていた。

 それでも認めたくなかった。

 誰かを特別な存在にしてしまえば、その相手を守れなかった時の後悔も、失った時の痛みも計り知れない。

 だからこそ、これまで必要以上に踏み込まないようにしてきたはずだった。

 それなのに、気付けば羽衣子は昴の中で希海と同じくらいに大きな場所を占めていた。

 そう自覚した瞬間、自嘲気味な笑みが漏れる。

「……もう、今更か」

 羽衣子は既に稲見組から狙われる立場になっている。

 それについては想汰が要因の一つではあるが、それがなくとも、昴の傍にいる以上は遅かれ早かれ標的になっていただろう。

 共に暮らしていることを知られている時点で、敵は羽衣子を昴にとって大切な存在だと判断する。

 それで言えば希海も同じく標的にはなるが、幼い子供よりも大人で扱いやすい羽衣子の方が利用価値は高い。

 まして若頭の女だと認識されているのなら尚更だ。

 そして、もし万が一捕まれば――。

 そこまで考えたところで昴は無意識に奥歯を噛み締めた。

 正直、その先を想像したくはなかった。

「…………」

 気付けば煙草は短くなっていて、灰皿へ押し付けて火を消し静かに息を吐く。

 そしてようやく認めることになる。

 羽衣子はもう、自分にとって失いたくない存在なのだと。

 認めることを避け続けていただけで、その存在はいつの間にか想像していた以上に昴の中で大きくなっていた。
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