極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 翌朝、目を覚ました羽衣子は自分がどこにいるのか思い出すまでに少し時間がかかった。

 ぼんやりとした頭で周囲を見回しながら身体を起こしたその時、ソファーで眠る昴の姿が目に入った。

 長い脚を投げ出し、腕を組むようにして横になっていて少し窮屈そう。

「えっ……!?」

 どうして昴がソファーで寝ているのか、そもそも自分はいつベッドに入ったのか、分からないことだらけで一人混乱していると、

「……ん」

 小さな唸り声と共に昴が目を開き羽衣子へ視線を向けた。

「起きたか」
「あ……」
「よく眠れたみたいだな」
「はい……あの……私、昨日、いつの間に寝ちゃったんでしょうか?」

 そう尋ねた瞬間、昴はわずかに視線を逸らし、どこか気まずそうなその様子に羽衣子は首を傾げる。

「……度数の強い酒を飲んでな」
「え?」
「酔って、そのまま寝た」

 その言葉を聞いた途端、羽衣子の顔色がみるみる変わり、

「す、すみません!!」

 勢いよく頭を下げた。

「わ、私、何かご迷惑をお掛けしませんでしたか!?」
「……いや。別に」

 否定はされたけれど、その返事はどこか歯切れが悪く聞こえ、それがかえって羽衣子の不安を煽った。

(やっぱり何かしたんだ……!!)

 記憶がないからこそ余計に怖いと羽衣子は思う。

「あの、本当に申し訳――」
「別に大したことじゃねぇよ」
「え?」
「ただ……名前で呼んで欲しいってことと、敬語を止めて欲しいってことを、言ってただけだ」

 昴の言葉に羽衣子の思考がぴたりと止まる。

「…………え?」
「だから」
「そ、それ、私が言ったんですか!?」
「……ああ」
「す、すみません……!」

 再び真っ赤になった羽衣子は先程よりも深く頭を下げる。

「そんな偉そうなことを……!」

 謝り続ける羽衣子に昴は言った。

「別に怒ってねぇし、気にしてねぇから」
「でも……」
「いいんだ……正直、俺もそのほうが楽だから」
「え……?」

 その瞬間、羽衣子はふと気付く。

 今までの昴はいつも穏やかだったことや、優しく微笑み気遣うように言葉を選び、一定の距離を保とうとしていたことを。

 けれど今、目の前にいる昴は少し違う。

 無理に取り繕うこともなく飾った笑顔を浮かべることもない。

 言い方も少しぶっきらぼうだけど、これまでの昴よりも彼らしい。

 組員たちに見せていた飾らない、素の昴が自分の前に居るのだと。

 それはきっと、羽衣子には素を見せても良いと判断した結果なのだろう。
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