極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
気になる
 二人が部屋を出ると、廊下には乙哉が待機していた。

「あ、もう良いんすか?」
「ああ、それより、身体の方は問題ないのか?」

 昴が尋ねると乙哉は肩を竦めた。

「平気っよ。まあまだ傷は残ってるけど、骨の方は大丈夫だったし」

 例の襲撃事件以降、暫く安静を余儀なくされていた乙哉だったが本人はすっかり元気そうだった。

「それなら良いが、くれぐれも無理はするなよ」
「分かってますって」

 そんなやり取りをしながら三人は外へ出る。

 乙哉は自身が乗って来た車へ乗り込むと運転席からミラーで後部座席に座る昴と羽衣子をチラリと見る。

 そこでふと気付く。

(……あれ?)

 言葉では説明出来ないが、二人の間に流れる空気がどこか違うことに。

 何より昴が羽衣子へ向ける視線が、希海に向けるものと同じになっているのだ。

(……もしかして、昨夜何か進展があった……ってことか?)

 確証は無いが昨夜二人きりの状況で何か進展があったことは明白で、何があったかまでは分からないものの二人の仲が縮まったことを嬉しく思った乙哉の口角はほんの少し上がっていた。

「まずは組長(オヤジ)の屋敷に向かってくれ。希海を迎えに行く」
「了解」

 昴の指示に乙哉は軽く手を挙げた。

 そんな二人の会話を聞きながら羽衣子は小さく背筋を伸ばす。

 組長の屋敷――その言葉だけで緊張してしまうのは無理もなかった。

 車は高速道路へと入り、窓の外を流れていく景色を眺めながら羽衣子は昨日の出来事を思い出していた。

 この道で繰り広げられたカーチェイス。

 追い詰められた恐怖を思い返しただけで胸の奥がざわつき、身体が強ばっていく。

 するとふいに手の甲へ温もりが触れた。

「……っ」

 驚いて視線を向けると、隣に座る昴が何事もないような表情で前を見ているものの、彼の手は羽衣子の手の上にそっと重ねられていた。

 言葉はないけれど、大丈夫だと言われている気がして羽衣子の胸は別の意味で大きく高鳴った。

 慌てて視線を逸らしながらもその温もりのおかげで先程までの不安は少しずつ薄れていくのだった。
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