極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「顔色が、あまり良くないように見えたので」

 ほんの少しの沈黙の後、羽衣子は首を横に振る。

「……いえ、大丈夫です」
「そうですか」

 昴はそれ以上は追及せずに小さく頷くと、

「それでは、失礼します」
「はい……ありがとうございました」

 軽く会釈を交わして車へと戻っていく。

 そして、去っていく車を見送りながら羽衣子は無意識に手紙のことを思い出していた。

(びっくりした……いきなりあんなこと聞かれるなんて……)

 普通に接していたつもりだった羽衣子は悩んでいることを見透かされていたことに驚きつつ部屋へ戻ると、すぐに机の上の手紙を手に取る。

 それから少しだけ深呼吸をしてスマートフォンを手に取り、記されていた番号へ発信した。

『……もしもし』

 すると数コールの後、電話が繋がり、

『もしかして、羽衣子か?』

 兄が嬉しそうに声を上げた。

「うん……久しぶり」
『元気だったか?』
「うん……お兄ちゃんも、元気?」
『まあ、うん』

 どこか歯切れの悪い答えに違和感を覚えつつも、手紙の内容を切り出した。

「……手紙、びっくりしたよ」
『ごめんな、いきなり……。突然訪ねるのはさ、お互い心の準備が必要かと思って……とりあえず、手紙を送ったんだ』
「……そっか……。でも、どうして私が住んでる所が分かったの? 叔父さんに聞いたとか?」
『いや、流石に叔父さんに会わせる顔が無いから会ってない。探偵雇って探してもらったんだ……羽衣子のこと』
「探偵……。そっか……」

 それならば居場所が分かったのも頷けるとそれについては追求せず、

「……その、お金のこと、だけど……」
『ああ、今までごめんな。あの時は色々あってさ……どうしても返せなかったんだ……』
「そっか……」
『それで、いつなら会える?』
「……えっと、早くて来週の日曜日……かな。土曜日は仕事があるから……」
『分かった。それじゃあ来週の日曜日、羽衣子の家に行くよ。いい?』
「うん、分かった」

 こうして羽衣子は来週末に兄と会う約束を交わして電話を終えた。

「……お兄ちゃんと会う……。久しぶり過ぎて、何だか緊張するな……」

 唯一の家族である兄と会えることはやはり嬉しい。

 今度こそ連絡が途絶えることなく家族として繋がれたら良いなと思いながら兄への思いを馳せた。
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