極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「希海くん!」

 羽衣子は顔を綻ばせると、勢いよく飛び込んできた希海をぎゅっと抱きしめ返した。

 二人のやり取りに、その場の空気がふっと和らぐ。

 車の外に立つ昴の姿が視界に入った瞬間、羽衣子の胸が小さく跳ね、先程の乙哉との会話が頭を過ぎる。

(経験……昴さんなら、やっぱりあるよね……)

 それを意識するなと言われても無理だった。

 目が合いそうになるだけで落ち着かず慌てて視線を逸らしてしまうと、その様子を見た昴が不思議そうに眉をひそめた。

「羽衣子」
「は、はい?」
「どうかしたのか?」
「い、いえ! 何でもないです」

 否定はするも、明らかに様子がおかしい羽衣子に昴が更に問いかけようとしたその時だった。

 嫌な予感を察した乙哉が慌てて口を挟む。

「よし! それじゃ帰りますか!」

 半ば強引に話を進められて昴は少し怪訝そうな顔をしたもののそれ以上は追及せず、一行を乗せた車は自宅へ向けて走っていく。

 家に着くと、羽衣子と遊びたい希海が彼女の手を引いて玄関へ向かう。

 そんな二人が家の中へ消えたのを確認してから乙哉も後に続こうとしたものの、

「乙哉」

 低い声に呼び止められ、乙哉の肩がびくりと震える。

「は、はい?」

 振り返ると鋭い瞳を向けた昴がじっと乙哉を捉えていた。

「俺に何か隠してないか?」
「いや、別に何も無いっすけど……」
「……羽衣子の様子がおかしいが……二人きりで何を話してたんだ?」
「…………」

 乙哉は思わず目を逸らす。

「俺には言えないことなのか?」
「……いや、そんなことは……」

 沈黙が続く中、観念したように乙哉は頭を掻くと言葉を続けていく。

「その……」
「何だ」
「昴さんと羽衣子ちゃんの空気が変わったっていうか、距離が縮まった気がしてたのと、昨日はホテルで二人きりだったから……」

 昴の表情が微妙に険しくなるのを感じるも乙哉は話すのを止めず、

「てっきり、ヤッたのかと思って――」

 そこまで言ってから言葉を止めると、

 昴は片手で額を押さえながら深い溜め息を吐き、

「はぁ……」

 呆れた様子で乙哉を睨みつけていた。
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