極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「すいませんって! 悪気は無かったんすよ……」
「口にして良いことと悪いことがあるだろうが」
「いや、でも普通そう思いません? 男女がホテルで一晩一緒にいたんすよ?」
「状況によるだろうが」
「いやいや、それなら尚更――」

 反射的に言い返しかけた乙哉だったが、途中で言葉を飲み込んだ。

「……何だ?」

 訝しげな視線を向けられた乙哉は気まずそうに頬を掻く。

「いや、その……羽衣子ちゃん相手だと昴さんって思った以上に紳士なんだなって」
「はあ?」
「い、いや! 何でもないっす!」

 鋭く睨まれて乙哉は降参とばかりに慌てて両手を振った。

「本当にすいませんでした! もう余計なこと言わないんで!」

 そう言い残すと逃げるように家の中へ駆け込んでいく。

 乙哉が家の中へ入って行った後、静かになった庭先で昴は額を押さえながらもう一度深く息を吐いた。

「ったく乙哉の奴、余計なことを」

 思わず零れた愚痴は誰に聞かれることもなく風に乗って消えていく。

 普段なら適当に流せる話だったが今回はそうもいかない。

 羽衣子の反応があまりにも分かりやすかったからだ。

 まあ、見るからに耐性も無さそうな羽衣子があんな話を聞かされれば意識するのも無理はないだろう。

「……はぁ」

 三度目の溜め息を吐いた、その時、玄関の扉がそっと開いた。

「昴……さん?」

 そこには恐る恐る顔を覗かせた羽衣子の姿が。

「どうした?」
「あの……お茶、淹れたんですけど……」

 未だどこか落ち着かない様子を見ると、まだ意識しているらしい。

 昴は内心で乙哉を一発殴りたい気分になった。

「分かった。今行く」
「は、はい」

 昴が返事をすると羽衣子は安心したような表情を浮かべ、先に家の中へ戻ろうとしたところでふいに振り返った。

「あの……」
「何だ?」

 羽衣子は少し迷うように視線を彷徨わせた後、

「……すみません……さっきはよそよそしい態度を取ってしまって……」
「…………」
「その……私……」

 必死に弁解しようとする羽衣子を前に昴は、

「別に怒ってる訳じゃない。ただ、乙哉には発言に気をつけるよう、きちんと言っておいたがな」
「…………っ!」
「アイツの言ったことは気にするな。ほら、お茶が冷めるんだろ」
「あ、はい!」

 これ以上考えたところで仕方がないと、昴は羽衣子と共に家の中へ入って行った。
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