極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「どうかしましたか? お湯、沸いてますけど」
「え? あ、本当だ! すみません、ボーッとしてて!」

 慌てて我に返った羽衣子に皐月は苦笑する。

「いえ、コーヒーなら俺が淹れますよ?」
「だ、大丈夫です! 私がやりますから!」

 羽衣子は慌ててケトルを手に取りカップへお湯を注ごうとしたけれど、焦っていたせいか勢いよく注いでしまい跳ねた熱湯が手の甲に飛び、

「熱っ!」

 思わず顔を歪める。

 ケトルを落としかけたその瞬間、皐月が素早く受け止めた。

「大丈夫ですか!?」

 ケトルを脇へ置くと皐月は羽衣子の手を取ってシンクへ向かう。

「冷やさないと」

 蛇口をひねって水を流しながら手を冷やし始めた。

「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。ちょっと跳ねただけですから」

 そう答えた時だった。

「何をしているんだ?」

 低い声が聞こえて羽衣子と皐月が振り返ると、いつの間にか一階へ降りてきていた昴がキッチンの入り口に立っていた。

「あ、昴さん。すみません、今すぐ――」

 そう羽衣子が言いかけるも昴の視線は彼女ではなく、手を取っている皐月へ向けられている。

「吾妻さんの手にお湯が跳ねてしまって、今、冷やしていたところです」

 皐月が説明すると昴は短く頷き、冷凍庫から氷を取り出してビニール袋へ詰める。

「皐月、後で書斎にコーヒーを持ってきてくれ」
「はい」
「羽衣子」

 呼ばれた羽衣子が顔を上げると氷の入った袋を手渡された。

「これを当てておけ」
「え、でも――」
「部屋に戻るぞ」

 昴はそう言うと踵を返してリビングを後にした。

 賑やかなゲームの音が遠ざかる中、羽衣子は氷袋を握りしめながら、その背中を慌てて追いかけた。
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