極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 昴の後を追って廊下を歩きながら羽衣子は氷の入った袋を手に当てた。

「す、すみません……コーヒー持って行くの遅くて……」

 思わず謝ると、前を歩いていた昴が足を止める。

「そんなことはどうでもいい。手は平気なのか?」
「はい、ほんの少し跳ねて当たっただけなので。あの、私がコーヒーを持って行きますから……」
「それは皐月がやるから構わない。部屋へ戻るぞ」
「……はい」

 そのまま二階へ上がり、羽衣子の部屋へ入ると、ベッドの上に座るよう促された羽衣子は大人しく腰を下ろした。

「見せろ」
「え?」
「手だ」

 言われて右手を差し出すと、昴は羽衣子の手を取り赤くなった部分を確認した。

 本人も言う通り大きな火傷にはなっていないようで、昴は僅かに眉間の皺を緩めた。

「酷くはなさそうだな」
「はい、すみません、ご心配をお掛けして……」
「そんなことはいい。それよりも痛かっただろう」
「え……」

 予想していなかった言葉に羽衣子は目を瞬かせた。

「悪かったな、俺がコーヒーを頼んだばかりに」

 昴は羽衣子の手を離すと、近くの椅子へ腰掛ける。

「そ、そんなことないです! 私がボーッとしていたのが悪かっただけで……」
「何か心配ごとがあるのか?」
「…………」
「言いたくないなら無理には聞かない。とにかく、今日はもう休め。それじゃあな」

 言って昴は立ち上がって部屋を出ようとすると、羽衣子は意を決したように口を開いた。

「あの!」
「何だ」
「……心配ごと、では無いんですけど……気になることが、あって……」

 羽衣子は膝の上で指を握り締めながら言葉を続けていくと、

「気になること?」
「……その、ホテルの時の、ことです」

 それを聞いた昴の目が細められた。
< 115 / 117 >

この作品をシェア

pagetop