極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「気にするなって言われたけど、広瀬さんに言われたことが……やっぱりどうしても気になってしまって……」
「…………」
「……その、ホテルに泊まったのに、何もなかったのは、おかしいって……」

 言葉にすると恥ずかしくなったのか、羽衣子の声がどんどん小さくなる。

「だから、その……」

 顔を伏せたまま、ようやく本音を絞り出した。

「それって……私に……魅力が無いからだったのかなって……」

 言い終えた瞬間、羽衣子は自分で何を言っているのかと後悔した。

 穴があったら入りたいとはこういう時に使うのだろうだなんて思っていた。

 けれど昴は怒ることも笑うことも呆れることすらせず、むしろ、深いため息を吐いた。

「羽衣子」

 低く名前を呼ばれた羽衣子は顔を上げると、昴に真っ直ぐに見つめられる。

「魅力が無いから手を出さなかったわけじゃない…………むしろ逆だ」
「……え?」
「……お前は魅力的だよ。俺にとっては、誰よりも」
「……っ!」

 思いもしなかった言葉を前に、羽衣子は驚いて目を大きく見開いた。

「そんなお前とラブホテル(あんな場所)に居て、意識しないはずが無い。けどな、あくまでも安全を確保する為に泊まっただけだったあの状況で、そんなことが出来るはず無いし、それに……お前は俺を信用していたようだから、その信用を裏切るような真似をしたくは無かった」
「昴……さん……」

 昴の本音を聞いた羽衣子は、思考が追いつかないでいた。

 昴にとって自分は魅力的な存在で、昨夜はもしかしたら、ただ泊まるだけで済んでいなかったかもしれなかった。

 そんな事実を知ってしまった羽衣子はどう反応していいのかが分からず、何も言葉を発することが出来ないでいた。

「……だからこれ以上、自分に魅力が無いとか、そういうことは口にするな。いいな?」

 羽衣子にそう念を押す昴を前に、ただコクリと頷くだけの羽衣子。

 気まずい空気が二人の間に流れると、部屋の外から階段を昇って部屋に近付く足音が聞こえてくる。

 恐らく皐月が書斎にコーヒーを届けに来たのだろう。

「とにかく、余計なことは考えずにさっさと休め」

 それだけ言って昴は再び部屋を出ようとした、その時、

「――狡いです……そんなの」

 羽衣子の口からそんな言葉が飛び出して来たことで昴は足を止めた。
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