極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 自然公園に到着すると、希海は乙哉と一緒に虫かごと虫取り網を手に木々が生い茂る林の中へ駆けて行き、その様子を見送りながら昴と羽衣子は木陰にレジャーシートを敷いて並んで腰を下ろす。

「元気だな」
「広瀬さん、乗り気じゃ無さそうでしたけど、こういう時はいつでも全力ですね」
「アイツはそういう奴なんだよ。だから助かる」

 楽しそうに虫を追いかける二人を眺めながら昴が小さく笑う。

「ふふ、見ているだけでこっちまで楽しくなりますね」

 穏やかな時間が流れる中、昴はそっと羽衣子の手に触れた。

 昨夜、ようやく結ばれたばかりではあるが、昴は羽衣子に触れたくて仕方がない気持ちを抑えきれず、指先を絡めるように手を握る。

「……っ」

 ふいだったからなのか羽衣子は驚いたように目を瞬かせたものの、恥ずかしそうに微笑みながら握り返してくる。

「嫌だったか?」
「いえ……その、びっくりしただけです」
「そうか」

 そんな短い会話ですらも胸が満たされていく。

 二人は繋いだ手をそのままに、楽しそうにはしゃぐ希海たちを見守った。

 それから暫くして、いくつか虫を捕まえた二人が駆け寄ってくる。

「みて! つかまえた!」
「おお、凄いな」
「うん!」

 昴が褒めると希海は得意げに胸を張った。

 四人はレジャーシートの上に座り、持参したマフィンを食べながら休憩を取る。

 そんな中、ふと思い出したように乙哉が口を開いた。

「そういや、この近くに昆虫博物館あるんですよね。そこ行きません?」
「こんちゅうはくぶつかん?」

 希海の目がぱっと輝く。

「そうそう。希海、昆虫博物館行きたくね? 色んな虫が見られるかもしれないぜ?」
「はくぶつかん!! いく!」

 元気よく返事をする姿に乙哉は満足そうに頷いた。

「昴さん、どうっすか?」
「そうだな。いいんじゃないか?」
「羽衣子もいいか?」
「はい、勿論です」
「それじゃあ、これ食ったら行きますか」

 こうして一行は公園から車で二十分程の場所にある昆虫博物館へ向かうことになった。

 移動中、乙哉が思い出したように声を上げる。

「そうそう、博物館の近くにカフェとかあるんで、昴さんと羽衣子ちゃんはそっち行ってきたらどうです?」
「え?」
「希海は俺が見てますから。ね?」

 気の利いた提案に昴は思わず苦笑した。

「悪いな」
「気にしないでくださいって」

 そして博物館へ到着すると乙哉は希海と手を繋ぎながら建物の中へ向かっていく。

「いってきまーす!」

 元気な声を見送り、昴は運転席へ移動した。

「じゃあ、俺たちも行くか」
「はい」

 柔らかく微笑む羽衣子に微笑み返し、昴は車を発進させ、二人を乗せた車は博物館近くのカフェへと向かって走り出した。
< 133 / 152 >

この作品をシェア

pagetop